Monday, March 29, 2010

適正技術とは

遠藤です。
今回10日間日本に滞在しましたが、そのうち5回もイベントに招待していただき、たくさんの方々にお会いする機会がありました。D-labのような「技術開発」と「国際開発」の2つの異なる「開発」を組み合わせた試みは日本では新鮮に見えるようで、多くの方に興味を持っていただきました。その中で一番多かった質問のひとつが「適正技術とはなにか?」というものでした。おそらく様々な団体が少しずつ異なる定義をしているかと思いますが、ここではD-labで教えている適正技術について紹介したいと思っております。多くの情報がD-labの教科書として使われている"Mastering the machine revisited: Poverty, aid, and technology"から学んだものです。

適正技術(Appropriate Technology)はもともとは中間技術(Intermediate Technology)という名前で、Ernst Friedrich Schumacherによって提唱されました。彼は名前から予想できるようにドイツ生まれですが、後々イギリスにて有名なEconomic Plannerとして活躍しました。戦後の復興活動の中で、高度な近代技術を用いた暴力的な援助が成功しないことから、ハイエンドでもローエンドでもない中間に存在する技術が、多くの雇用を生み出すということを述べ、中間技術の重要性を述べています。さらにSchumacherは仲間とともに非営利団体Intermediate Technology Development Group(ITDG)を立ち上げ、中間技術の普及に努めたのです。1960年代のことでした。のちにこれらのコンセプトは"Small is Beautifle"という書籍にて発表され、後の適正技術へ続いていきます。

その後、時代と共に戦後復興から途上国開発へと意味合いが変わり始め、中間技術という言葉が一般化されるようになりました。そして、中間技術という言葉は
  • 小型
  • 単純
  • 安価
  • 非暴力
という4つの特徴に集約されるようになりました。しかし、中間技術という言葉は相対的な言葉で、必ずしも適切な技術を意味するものではありませんでした。それはハイテクやローテクといった言葉にも当てはまります。例えばペニシリンは非常に有名な抗生物質でいずれの国にも適正な技術(かわりになる技術がないため)なはずですが、中間技術ではないのです。

そこで、Schumacherの死後、ITDGを引き継いだGeorge McRobieらは4つの特徴を引用しつつ、新しい適正技術という言葉を使うようになりました。適正技術とは
  • コミュニティーの多くの人が必要としている
  • 持続可能性を考慮した原材料、資本、労働力を用いる
  • コミュニティーの中で所有、制御、稼働、持続が可能である
  • 人々のスキルや威厳を向上させることができる
  • 人々と環境に非暴力的である
  • 社会的、経済的、環境的に持続可能である
という条件をすべて満たす技術のことを意味しています。ちなみにD-labのwebsiteでは
technologies designed to suit the needs of the community it is intended for, being culturally sensitive, environmentally responsible and spreading productive employment opportunities.
と紹介されております。

これらの定義の他にもさまざまな団体(OECDGRET、ATIなど)が適正技術に関する議論をしておりますが、個人的には言葉の定義に関して、最低限の定義は必要とは思いますが、細かく定義しすぎるのは無意味と思っております。大抵の団体は同じような定義をしておりますし、言葉の意味よりも行動のほうが重要だと思っているからです。

なので、「適正技術とはなんですか?」と聞かれたら、D-labのwebsiteのように「現地のニーズ、文化、環境、人などを考慮したうえでの、最善の技術」と簡単に説明させていただいてます。

参考文献
Ian Smillie, "Mastering the machine revisited: Poverty, aid and technology", Practical Action Publishing, 2000
E. F. Schumacher, "Small is beautifle", 1973
"Putting Partnership into Practice", ITDG, 1989

Tuesday, March 23, 2010

スタンフォード大学:Design for extreme affordabilityの授業紹介

こんにちは。この9月からスタンフォード大学のビジネススクールに入学予定の陸です。(ハーバードケネディスクールはビジネススクールとのJoint degree programを設けており、私はこの5月にケネディスクールでの一年目を終えて、9月から西海岸に移る予定です。)
以前、Kopernikのブログに、スタンフォードのDesign for Extreme Affordabilityという適正技術の授業見学の様子をレポートいたしました。

シンポジウム後の補足として、こちらのブログでも内容を紹介させてください。

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(以下、Kopernikブログより引用)

先週末、スタンフォードを訪問する機会があ り、そこでDesign for extreme affordabilityという途上国向け製品開発を教える授業 を見学してきました。今日は簡単にその授業の紹介をいたします。この授業は、IDEOの創設者であるDavid Kelleyが率いるD.Schoolというデザインスクールが運営する 授業の一つで、デザイン、エンジニアリング、ビジネスなど異なる分野を専攻する学生が互いのスキルを持ち寄って、提携先の NGOが持ち込んだ途上国でのデザイン課題に取り組んでいます。

授業構成の詳細は、こちらに載っているので見ていただければと思い ますが、授業を見学して感じた特徴についていくつか書いてみようと思います。

①Design Thinking
D.school全体を貫くテーマ が、
Design Thinkingという「人間(ユーザー)の生活全体を中心 に、総合的・クリエイティブに、現実的な解を考えよう、というコンセプトです。というと、訳がわからないように聞こえます が、例えばExtreme Affordabilityの授業では下記のようなパーツが織り込まれていました:

-Ethnography
記 述民族学などと訳されますが、マーケティングの手法の一つとしても注目されているもので、ユーザーの生活を文化人類学のように判断を はさむことなく丸ごと観察し、受け入れることで、ユーザーのニーズを理解・特定していくプロセスのことを指します。授業では、始 めは大学付近の消防士やウェイターなど自分とは全く違う生活をしている人を観察させる宿題を出すなどして、Ethnographyを 教えているとのことでした)

-Rapid Prototyping and iteration
製品デザインのプロトタイプを考 えるだけではなく、ビジネスモデル・プロモーションプランまで含めたトータルのビジネスデザインを短時間で考え、何 サイクルも回すことで改善を進めていくプロセスのことです。見学した授業ではちょうど、ベンチャーキャピタルに見せるビジネスプラン のプロトタイプをどう作るか、というエクササイズをやっていて、先生が「製品のポジショニングはこう考えるべし」という エッセンスを5分程度話したあと、5分ほど時間をとって、各チームがポストイットと模造紙を駆使して、アイディアをどんどん書いては 貼っていくというエクササイズを繰り返していました。(これまたマーケティングの世界でも使われる手法の一つで、前職で新ブランド立 ち上げの仕事にかかわっていた時にクライアント企業と行っていたエクササイズを思い出しました。)

教室の外では過去の受講生が作った パネルが展示されていました。いくつか紹介します:





②Multi-disciplinary / Collaborative dynamics
授業後にインストラクターに授業の一番のエッセンスを聞いたところ、最も強調し ていたのが「Multi-disciplinary」であることでした。異なるバックグラウンド、スキルセットを持った学生が集まる 中で初めてクリエイティブなアイディア、また包括的なビジネスデザインができるという言葉に大きく共感しました。

ま た、授業の大きな成功要因に、途上国にいるパートナーNGOの存在も挙げていました。パートナーを組んでいるNGOが、日頃の活動を 通して見えてきた現地のニーズや現在使っている製品の問題点などをあらかじめ的を絞って学生に伝えることにより、学生はすぐさまデザ イン思考のプロセスに入れるようです。プロジェクトの最終成果物も、まずはパートナーを組んでいるNGOを通じて現地での実用化の道を 考えるそうで、「現地からの情報吸い上げ」と「現地への製品提供」の双方向のコラボレーションがしっかりしていることが成功の秘訣と なっているようです。

③Practicality
もう一点、授業中繰り返しインストラクターが 強調していて、多少意外だったのが、「現実的であれ」というポイントです。
クリエイティビティという言葉から、ついつい「失 敗してもいいから好きに考えてごらん」という姿勢で臨むのかと思っていたのですが、インストラクターは授業中、繰り返し、「すでに世 の中に同じ製品があるなら、同じものは作るな。『買う』のがベストな解であることもある」「競合サーチを怠るな。100年前のアン ティークで実は必要な機能を満たしている製品をEbayで見つけて、それを改良したチームもある」「まずはパートナーを通じて製品を届けること を考えるように。ベンチャーを作ると、生産インフラから配達ネットワークまで一から作ることになって労力がかかる。」など と、「現実的に最も効率の良い解を考えるように」ということを強調していました。

デザイン思考のエッセンスの一つに「現実的で あること」があるそうですが、どこまでも、「どうやったらユーザーにとってのインパクトを最大化できるか」を中心に考えて いる姿勢の先に初めて成功するデザイン・ビジネスがあることを改めて実感しました。

もちろんこういった現実解を強調する一方 で、「リスクを自由に取れる環境」もばっちり用意されています。授業にはベンチャーキャピタル、弁護士、現地への旅行手配 などのサービスがしっかりついていて、実際にこれらのインフラを利用してベンチャー化したチームもいくつかあるようです。

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たっ た2時間の授業でしたが、途上国向けものづくりのエッセンスが詰まった、実り多い見学となりました。

Sunday, March 21, 2010

シンポジウムを終えて~私たちにできる始めの一歩~

3月20日のシンポジウムにご参加くださった皆様、休日にもかかわらず、足をお運びくださり、ありがとうございました。
皆様のおかげでとても実り多い会となりました。終了後の懇親会で、他分野の方々が熱心に意見交換されていたのが大変印象的でした。

さて、シンポジウムを終えて、一つだけ言い足りなかったと後悔していることがあります。
「適正技術教育の輪を日本にも」という掛け声の下、皆さん一人一人へ行動をとるよう呼びかけましたが、果たして「私にもできる気がする」と思えるだけの自信のかけらを与えられたかどうか、と。

第1部の質疑応答で、東京工業大学の学生さんが素晴らしい質問をしてくださいました。
「東工大では、ICT ChannelというサークルでD-Labと同じような活動をしている。しかしながら、学生団体なので十分なリソースのサポートもないし、卒論にすることもできないので学生の時間も割きづらい。D-Labはどのように始まったのか。またどこから資金をもらっているのか。」というものでした。

質疑応答中は時間の都合上、十分にお答えをすることができませんでしたが、「D-Labの活動は良くわかった。では、私たちはどうすればいいのか」という心の叫びが聞こえるようで、シンポジウム終了後も、ボストンへの飛行機の中も、ずっとその質問がつきまとって頭を離れませんでした。

今日はこの場を借りて、私なりの回答を書いてみようと思います。
D-Labは以前のエントリーにもあるとおり、2003年にEdgerton CenterでInstructorをしていたAmy Smithが始めました。初めてコースが開講された頃、私はMITに学部生として在籍していましたが、卒業する2006年まで、D-Labについてはほとんど知りませんでした。 Amy Smithについては、Genius Grantを受賞した2004年に、学内新聞で名前を見かけていましたが、その時の印象も、「へえ、大学内には不思議なことをしている人もいるんだ。」という程度の認識でした。
Edgerton Centerは日本で言えば工学部に併設された工作室、東工大でいえば、「ものつくりセンター」のようなセンターです。そのセンターのインストラクターといえば、いわば「工作室のおっちゃん」(いえ、Amyはおっちゃんではなかったわけですが)。D-Labは決して、華々しく工学部の新規コースとしてデビューしたわけでもなく、学長の戦略的教育プログラム拡張によって導入されたわけでもなく、大学の工作室の隅で、物好きな人がひっそり始めた、ひっそりしたコースだったのです。

そのD-Labは今や、MITのAdmissionのページでも宣伝されるほど、大学にとっての自慢コースの一つになっています。シンポジウムのプレゼンにもあったとおり、12クラスの授業は毎回すべて定員オーバーで生徒の選抜に苦慮するほどです。

どうしてそこまで広まったのか。様々な要因がありますが、本質的にはAmy Smithから始まったD-Labがその後、多数のインストラクター・パートナー団体をはじめ、新たな仲間を巻き込み、常に「オモシロイモノ」を生み出し続けてきたからではないかと思います。Joseが率いるInnovations in International Healthでは、構想段階のものまで含めれば、100以上の医療機器関連の開発が進んでいます。遠藤さんの教えている義足の授業には、MITで最先端の義足を開発するBiomechatronics Groupの知見が生かされています。D-Labからスピンアウトしたベンチャーの一つであるGlobal Cycle Solutionsでは、自転車動力の開発を授業のプロジェクトでとどめるのではなく、ビジネス上、持続可能な方法でアフリカ諸国に導入するやり方が模索されています。

もうすぐYouTubeにアップしますが、Joseや遠藤さんのプレゼンは聞いているだけで、「一・理系人間」としてわくわくしてしまいます。こんな授業があったら受けてみたい、と心から思います。私が今、MITの学部にいたら、間違いなく授業を受けていたでしょう。(現にハーバードから聴講しに行っているクラスもあります。)

・生徒が受けたいと思う授業が提供されている
・受講した生徒に、確かな教育インパクトが出ている(受講した生徒の「目の色が変わった」という声は方々から聞きます)
・授業からスピンアウトした技術が世界中のパートナーから必要とされ、喜ばれている

こんなプログラムを大学がほっておくはずがありません。
始まりのハコは、実はなんでもいいのです。要は、中身をどれだけ情熱を傾けて作りこめるか、なのだと思うのです。

ほかの大学の適正技術教育プログラムを見ると、驚くほどにどの大学でも、一人か二人の情熱あふれる人(+その熱烈な仲間)がプログラムを支えていることがわかります。
CaltechのProduct Design for the Developing WorldKen PickarというVisiting Professorが、Engineers for a sustainable worldという学生中心の団体(2002年にコーネル大学の大学院生だったRegina Clewlowが始めた団体です)とコラボして始めた授業です。
UC BerkeleyのDesign for Sustainable CommunityはAshok GadgilというLawrence Berkeley National Laboratoryという国立研究所のシニア研究員が2006年に始めたものです。
ミシガン大学機械工学部で始まったGlobal Health Design Specializationというマイナー専攻は、Kathleeen SienkoというAssistant Professorが中心になって立ち上げたものです。(彼女はMITでドクターをしていた頃にD-Labについて知ったようです。)
UC DavisのProgram for International Energy Technologiesというプログラムは、MITのD-Labの発展にもかかわっていたKurt Kornbluthが中心になって設立しています。

書いていくとキリがありませんが、言いたかったのは、今は華やかに見えるアメリカの適正技術教育のプログラムも、最初は、大学の隅っこで、みんなからCrazyだと思われていたかもしれない、(そしておそらくCrazyだった)情熱あふれる誰かの一歩から始まった、ということです。

始めるのに立場は関係ありません。学生だからといって萎縮することも落ち込む必要もありません。
誰にでも、最初の一歩は切り開けるのです。

日本でも、一緒に、「オモシロイコト」、始めませんか。

Friday, March 19, 2010

「大学」×「技術」×「BOP」シンポジウム いよいよ本日

いよいよ、シンポジウム当日となりました!若干名、当日受け付けることが出来る可能性がございますので、もしご希望の方は直接会場受付までお越しください。皆様とお会いできるのを、実行委員一同、楽しみにしております!

Wednesday, March 17, 2010

「大学」×「技術」×「BOP」シンポジウム 定員到達、レセプション申し込み開始のお知らせ

3月20日の「大学」×「技術」×「BOP」シンポジウム、非常に直前の告知にも関わらず多くの皆様に申し込み頂き、ありがとうございます。

現在、定員を上回る参加申し込みを頂きましたことから、キャンセル待ちフォームに切り替えております。最終的な参加可否については、シンポジウム前日までに全ての方にご連絡差し上げますので、ご登録ください。ホール定員との兼ね合いを見ながら、繰り上げるかどうか調整させていただきます。なお、参加申し込みが確定されている方には、メールにて本日ご連絡差し上げました。1人でも多くの方を会場にご案内するため、お手数ですが御都合が悪くなりました場合にはご連絡頂ければ幸いです。

なお、レセプションの受付を開始いたしました。シンポジウム終了後、お隣の部屋でサンドイッチとお飲み物による非常に簡単なものをご用意いたします。(費用は2000円となります)こちらは先着150名、発注の関係で18日(木)午後6時を期限とさせて頂きますので、ご参加を希望されます場合はお早めにご登録ください。

Wednesday, March 10, 2010

【シンポジウム】 「大学」×「技術」×「BOP」 - 日本発、世界を変えるイノベーション

3月20日のイベント詳細が決まりました!多くの方に我々の活動を知っていただく機会になればと願っております。参加申し込みはこちらからお願いします。皆様とお会いできますことを楽しみにしております。

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貧困を始めとする、地球規模の様々な社会問題の解決が求められている中で、世界のトップ大学を中心に「技術」と「国際開発」を組み合わせた実践的教育が注目されています。技術立国を目指し、世界の課題解決を使命とするわが国でも、グローバルリーダー育成、実効性のある国際貢献、さらなる産学官連携に取組み、新たな理工学教育のあり方を世界に発信することが必要です。

本シンポジウムでは、その第一歩として、マサチューセッツ工科大学(MIT)の途上国開発に寄与する先進的講義(D-Lab)、そして日本の大学、産業界における取組みを紹介し、日本で進めるべき理工学教育・産学連携のあり方を考えます。詳細は下記のとおりとなっております。

ご多忙の折とは存じますが、是非ともご臨席をお願い申し上げます。


                     記

■イベント名
  「大学」×「技術」×「BOP」 - 日本発、世界を変えるイノベーション

■ 開催日時・場所
  2010年3月20日(土) 10:00 - 17:00
  政策研究大学院大学 想海樓ホール
   ※会場へのアクセスはこちら
   
■ 主催
  「大学」×「技術」×「BOP」 シンポジウム実行委員会

■ 共催
  政策研究大学院大学

■ 参加申込/お問い合わせ
  参加申込、およびイベント、その他のお問い合わせは、こちらのサイトよりお願いいたします。
  申込期限は3月18日(木)24:00です。
   ※参加費は無料です。
   ※定員(250名)到達次第の締め切りとさせて頂きます。

■ プログラム

 <午前の部> 10:00 - 12:00
   ・主催者挨拶
   ・基調講演 - William H. Saito 氏 (CEO, Intecur, K.K.)
   ・欧米のトップスクールにおける適正技術教育の広がり - 陸 翔 (ハーバード・ケネディースクール)

   第1部 MIT D-Labの取り組み
    モデレーター - 陸 翔
     ・D-Lab の概要 - 遠藤 謙, José Gómez-Márquez(MIT)
     ・D-Lab Health (医療機器開発)José Gómez-Márquez (MIT)
     ・D-Lab Prosthetics (義足開発) - 遠藤 謙 (MIT)

 <午後の部> 13:00 - 17:00
   第2部 日本の大学における取り組み
    モデレーター:高田潤一 氏(東京工業大学国際開発工学専攻長)
     ・エジプト日本科学技術大学 - ラメシュ・ポカレル氏 (九州大学助教)
・BOPを変革する情報通信技術 - アシル・アハメッド 氏 (九州大学准教授)
     ・ICU サービスラーニングセンター - 本郷好和 氏 (国際基督教大学准教授)

   第3部 産業界の取り組み、産学連携への期待
    モデレーター: 岡田正大 氏 (慶應ビジネススクール准教授)
     ・南アジアのソーラー灌漑電気自動車 - 金平直人 氏 (大手コンサルティング会社)
     ・ガイア・ソーラーランタンプロジェクト - 藤田周子 氏 (ガイア・イニシアティブ事務局長)
・ユーザーイノベーションを通じた途上国向け商品開発 -西山浩平 氏 (エレファントデザイン代表取締役)
     ・世界中の水をきれいに - 小田 兼利 氏(日本ポリグル会長)

   ・基調講演 黒川清 氏 (政策研究大学院大学教授)
   ・閉会の辞
 
 ※各部末では、質疑応答、総合討議の時間がございます。
 ※日本語/英語両方でのセッションを予定しています。
 ※講演者・タイトルについては、変更の可能性があります。

Tuesday, March 9, 2010

東京大学: AGSでのワークショップ

3月18日(木)のワークショップ詳細が決定しました!"Innovation for Sustainable Development" をテーマに、MITのD-LabからJosé Gómez-Márquez遠藤謙、東京大学のi.schoolから堀井秀之先生博報堂ユニバーサルデザインから井上滋樹氏Ecole Polytechnique Fédérale de Lausanne(EPFL)の建築学科からNing Liu氏に御講演いただきます。パネルディスカッションには、この分野の政策研究に詳しい鎗目雅先生にも加わって頂き、工学、教育、デザイン、建築、政策など様々な角度から、地球規模の社会問題へのイノベーションを増やしてゆくにはどうすべきか議論します。モデレーターはMITの言語学科教授でOCWの中心メンバーでもある宮川繫先生が引き受けてくださいました。

もしお時間が合えば、是非お立ち寄りください。出席には、AGS年次総会への参加登録が必要となります。会場は、医学部教育研究棟13階、第6セミナー室です、ワークショップは全て英語で行われます。イベントの詳細はAGSのホームページをご覧ください。

皆様とお会いできるのを楽しみにしております。

Monday, March 8, 2010

Jaipurfoot Pooja Mukul氏のレクチャー

3月3日、Developing World ProstheticsはJaipurfootのJaipurのクリニックよりPooja Mukul氏を招待し、レクチャーをしていただいた。

9時から14時まではJaipurfootのクリニックでボランティアとして活動し、16時から21時まで自分のクリニックで医者として働いているアクティブな女性です。


彼女は2005年から今のように二足のわらじを履くようになりました。彼女のレクチャーはインドの現状や先進国との違い、我々のような大学機関に求めることなど、非常のおもしろい内容でした。そのいくつかを以下に挙げてみます。
  • インドの切断患者は先進国と比べて非常に若い。その理由が電車や車の自己(先進国では糖尿病)
  • Dr. Wu(Northwestern Univ.)のソケットを作る技術は根付かなかった。その理由は、結局トレーニングを受けた人が必要だったから。(使うのが難しい)
  • Jaipurfootにはアメリカからも患者がくる。その理由は、2つめ3つめの義足をつくるには、保険が適用されず、いいものが使えないから。
  • Jaipur footは98%の利用者が満足している。
詳しくはDWPのwebsiteの彼女のスライドをアップする予定です。

彼女はこの数年StanfordのD.schoolのJoel Salder氏と協力し、Stanford kneeという義足の開発を行ってきました。いわば、我々のライバルです。ただし、ライバルといっても本当に競争していわけではなく、協力して授業の内容を話し合ったり、 Jaipurfootの義足を改善していこうとしております。(ちなみにJoelは昔MITの学部生のときにD-labを受講した人物です。)
義足には、大きく分けてEndo skeleltonとExo skeletonの2種類が存在します。Endo skeletonは、骨の周りに筋肉が着いている人間の筋骨格系と同じように、義足の中心に体重を支える堅い素材を使うのに対し、Exo skeletonは外骨格をもつ蟹のように、外部に堅い素材を使います。Stanford KneeはEndo skeletonを採用し、われわれはExo skeletonと使うという棲み分けをしています。そのために、我々の義足をExo-kneeを呼んでいるのです。

現状では、Stanford KneeはJaipurのクリニックだけだが既に患者に配布されているのに対し、我々の義足は残念ながらNew Delhiのクリニック周辺で3名が試験的に使っているだけです。その理由は、設計した学生が卒業してしまい、プロジェクトが数年ストップしてしまったからです。。これは学生主体のD-labの問題点でもあります。今年は私自ら設計し直し、今年の夏の配布を目指しているところです。

次の日、Poojaと私のアドバイザーHugh Herrを引き合わせました。その理由は、Hughのようなばりばりの研究者にこそ、このような問題に目を向けてほしいからです。最先端技術にばかり偏りがちの大学の研究室ですが、彼のように力もお金もある人物が動けば、少しずつでも適正技術開発にも目を向ける研究者が増えるのではと期待しています。

Monday, March 1, 2010

3月18日、3月20日のイベント

最終案が固まっておらず公開出来ないのですが、現在3月18日と3月20日にも東京でD-Lab関係のイベントを開催する準備を進めております。全ての講演者、会場が確定しましたらブログにも投稿いたします。現段階では、手帳に「イベントがありそう」とだけ記載しておいてください。

3月18日は東京大学本郷キャンパスでAGS年次総会の一部として"Innovation for Sustainable Development"というテーマのセッションを開催する予定です(March 18, Workshop C)。時間は14:00-17:30となります。講演は英語で行われます。

3月20日は我々D-Lab Japan(任意団体)が主催で「大学発、技術を通じた地球規模の社会問題解決」をテーマにした一般公開イベントを開催予定です。時間は朝10時から夕方5時頃までとなりそうです。適正技術、大学国際化、国際貢献、産学連携、BOPビジネス、イノベーション、社会起業、理工系大学教育改革などに興味がある方には満足していただけるシンポジウムになると思います。日本語、英語両方のセッションを予定しております。